大工のようなプログラマ

私の父は大工である。二級建築士で、大抵は二階建ての木造住宅を建てている。


私が学生のころ、たまに小遣い稼ぎとして父の手伝いをしていた。建前、床張り、ベニヤ張り、天井張りなどのハードワークがメインだ。特に天井張りはよく覚えている。普段はひとりでこなしているというのだが、どうやって二本の手ででかい石膏ボードを天井に添え、電動ドリルを持ってビスを打ち込んでいくのだろうと不思議に思ったものである。


少なくとも、二級建築士免許だけを持っていても絶対にできないだろう。ある程度の筋力・技術・経験が不可欠だと思う。これは、基本情報技術者などの試験の合格していてもプログラミングができるという訳ではない、ということに似ていると思う。


私は仕事をはじめてから手伝いをしなくなったが、少し前に建前の手伝いにいった。真夏の炎天下での肉体労働は過酷であったが、私は手伝いを終えてビールを飲みながら、大工のようなプログラマになりたいと思った。


これは、企画・見積・設計・実装・試験といった全工程に関わり、チームへの指示を出し、自らも各作業を行いながら、小中規模の価値のあるソフトウェアを、出来る限り作り続けていきたい、ということである。私の感触では、大規模開発だとこういった振る舞い・細部に至る丁寧な作り込み・めまぐるしい市場の変化への対応が難しそうなので、今はあまり興味が湧いていない。あとグラフィックデザイナーとしては作業できない。大工の人だって、電気・水道工事などは別の人が担当するからそういうのがあってもいいよね。他にも、企画・見積・設計・試験・効果の高いチームプレーなど苦手はことはたくさんある。


中学三年のときにPCに触れ、ゲームプログラミングをはじめてからもうすぐ15年になる。大工のようなプログラマになるにはもう少し時間がかかりそうだ。だが不可能ではないと感じているし、もうすぐそうなれるという予感はしている。


今回の手伝いは、学生のころと違い小遣いはもらえなかったが、自分を見つめ直すいい機会になったし体も少し鍛えられたので大儲けだったと思う。